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RISE
気に入らない。だけど、気になって、仕方ない。
時々飲みに行く店で、毎回といっていいくらい会うあいつ。


ちょっと軽い感じ、というのが第一印象。
初めて会ったのは、去年の暮れ。店のクリスマスパーティだった。
彼はあやしげなサンタの扮装をしていて、両隣に女の子を連れていた。
店は混みあっていて、少し遅れて行った私は、彼らと同じテーブルに案内される。
何となく、会釈。どうも、おじゃましまーす、みたいな当たり障りのない会話。
にぎやかな店の中では、それ以上会話もできない状態で、その時は、それっきり。


今まで気づかなかっただけで、彼はその店の常連らしかった。
本人や、周りから聞こえてくる彼の情報によると、若く見えるけど、実は私より7つも年上(らしい)。
あんまりお酒は飲めなくて、ジン1、ジンジャーエール9のジンバック(もどき)がお気に入り。
たまに一杯目からトマトジュースを頼むことがある。
割ともてる(らしい)。でも、初対面の時連れていた女の子は単なる友達で、特定の彼女はいないらしい。
(ゆえに、一部の常連の間ではホモ説あり)
見た目は、まあまあ。どちらかというと、私のタイプかもしれない。
でも、彼のほうは、私のことを、たんなる呑んべえ、と認識しているみたい。そこが気に入らない。別にいいけど。


その日は金曜日で、そのせいか、私は、ちょっと飲み過ぎていたかも知れない。
酔い覚ましのつもりで、店を出て、すぐ近くにあるレンタルビデオの店に入った。
あてもなくあちこちの棚をうろうろしていたら、向かいの棚の影から出てきた人とぶつかりそうになった。
「ごめんなさい」
そう言って顔を上げると、立っていたのは彼だった。
「酔っ払い?」
私は、どんなに酔っていても、人にそれを指摘されるのが大嫌いなタイプの人間だった。
「酔ってません」
彼に背を向けて、ビデオも借りずにそのまま出口に向かう。
しゃきしゃきと歩いていた(つもりの)私に、彼は簡単に追いついて言った。
「車だし、送るよ」
「え、いいの?」
こういうときの私は単純だ。


助手席に乗り込んで、シートベルトを締めようと俯いた。
「家、どっち?」
説明しようと顔を上げた時、彼の顔が間近にあって驚いた。
一瞬の感触。
「何すんの・・・」
ちょっと待って。混乱する自分に、必死で落ち着くよう、言い聞かせる。
「キス、して欲しそうに見えたから」
頭がくらくらしたのは、酔いが回っていたせいだけじゃ、ないと思う。


私の家までのほんの少しのドライブ。
不覚にも、動揺を悟られてしまった自分が悔しくて仕方ない。
カーステレオでかかっている曲を知っているとか、聞いたことあるとか、どうでもいい話をしながら、彼に気づかれないよう、私はよく回らない頭でリベンジの作戦を組み立てる。
体勢を整えるには、時間が足りない。


家のすぐ近くの、最後の曲がり角の手前で、彼は車を止める。
「ありがとう」
私はそう言って、ドアを開け、降りる、その前に。


「ついでだから、もう一回くらい、しとく?」


勝った。私が思った瞬間。
「・・・今日は、もうやめとく」
彼はそう言って、笑った。
リベンジは、失敗のようだった。


それから私は、隙あらば、彼に再度復讐しようと、機会を窺っている。
今のところ、なかなかそんなチャンスは訪れてくれない。
彼は相変わらず、ちょっと軽い感じで、誰にでも愛想がよくて、割ともてている。そのくせ彼女はまだいないようだ。


何でこんなに彼に絡みたいのか、自分でも分からないけれど。
もう、後に引けない。
これが、片思いってやつなのかな。



---コメント---

「RISE」、SING LIKE TALKINGのコンサートでは盛り上がり絶好調のナンバー。
最近はあまり歌ってくれなくなったけれど。
恋の駆け引き、のような歌詞がなかなかかっこいいです。

RISE(SING LIKE TALKING)
CHIAKI FUJITA/CHIKUZEN SATOH
SINGLE--1992/08/19
ALBUM--
HUMANITY(1992/02/26)
SECOND REUNION(1998/09/30)
by sivaxxxx | 2004-02-29 23:20 | かく


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