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平日だというのに、駅前という立地条件のせいか、この店のテーブルは八割方埋まっている。
客のほとんどはスーツ姿のサラリーマン。新聞を読んだりタバコをくゆらせたり、メモを取りながら電話で話している人もいる。出張中なのか、関西弁のイントネーションが面白くて、つい耳を傾けてしまう。
テーブル席でゆったりするのは諦めることにする。大通りを見通せる細長いカウンターにようやく空席を見つけ、私はホットコーヒーを乗せたトレイを置く。
こんなスタイルのカフェは味気ないけれど、一人で考え事をしたいときにはちょうどいい。
プラスチックのふたを取ると、マシン独特の粉っぽい香りが湯気とともに漂う。口をつけてみるけれど、熱くて飲めずにまたカップを置く。何度か同じことを繰り返しながら、ガラス越しに通りを行く人たちを眺める。
みんな少し早足で、どこかそわそわしているように見えるのは、やっぱり12月の空気のせいだろうか。


頬杖をつきながら、ずる休みしてしまった会社のことを考える。
頭が痛かったのは本当だけれど、測ってみても熱はなかった。36.4度、いつもとほぼ同じ。
ぐずぐずとベッドの中で丸まって8時半になるのを待ち、寝転んだまま携帯電話から会社に連絡した。
いつも一番に出勤してくる営業の男の人が、はきはきした声で電話に出る。精一杯の鼻声で休むことを告げた私に、その人は「お大事に」と言ってくれた。少しだけ罪悪感、胸が一瞬痛む。
いつも途中で家を出るせいで、最後まで見たことのなかった朝の情報番組を見る。星占いのコーナーでは、私の星座が「今日のラッキーさん」に選ばれていた。
今日だけ。会社のみんなには迷惑をかけるけれど、今日だけはのんびりしよう。
そう思った瞬間、頭痛が消えていることに気がついた。


こんなはずじゃなかった。
社会人になってからたった8ヶ月で、何度同じことを思っただろう。
「人とは違う仕事がしたいの」
そんなことを平然と口にしていた、自信過剰だったあの頃の私はもういない。毎日自分を否定して、否定されて、その繰り返し。
ひっきりなしになる電話、ひとつの案件を片付けようとする先から次の書類がまわってきて、そのどれもに「至急」のスタンプが押してあるものだから、いったいどれが本当に至急なのか分からなくなる。ミスを注意されるたびに、胃が痛くなる。頑張っても頑張っても終わらない仕事にため息をつき、時々人目もはばからず泣きたくなる。


・・・
・・・


約束だから」
去年のクリスマス。
隠すところが思いつかなかったからと苦笑しながら、が冷蔵庫から出してきたブルーの紙袋。
見た瞬間に中身が何か分かったけれど、私はわざとそのことに気づかないふりをして、大げさに驚いた顔をしてみせて。
「そんなに高いものじゃないからね。期待しないでね」
何度も念を押す彼に笑いかけながら、包みをゆっくりと解いてゆく私。
出てきたのは、想像していた通りのシンプルな指輪だった。ただ想像と違っていたのは、シルバーではなくて、プラチナだったこと。
「はめてみてもいい?」
そう尋ねた私に、彼は目だけで頷いた。
ひんやりした指輪を、そっと薬指に通してみる。蛍光灯のあかりにかざしてみる。
「・・・しない?」
一瞬言葉が聞き取れなくて、私は彼を振り返る。
「今なんて言ったの?」
「だから。・・・結婚しない?って」
口調は冗談ぽく、でも彼の表情は真剣だった。まっすぐ私を見ていた。
小さな指輪が、急に重く感じた。


・・・
・・・


・・・こんなはずじゃなかった。
あの時、彼の言葉に素直に頷いていれば、もしかしたら私の人生は、大きく変わっていたのだろうか。
考えても仕方ないことを考えてしまう。
そんな自分を冴えないと思う。


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登場人物紹介
☆片倉 麻里(かたくら まり)  会社員/23歳(5月16日生)
☆橘 征人(たちばな ゆきひと) 大学生/22歳(12月23日生)
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by sivaxxxx | 2005-12-02 00:43 | かく | Trackback(1) | Comments(12)
曖昧にバイバイ。

久しぶりに乗った助手席に何だか居心地の悪さを感じるのは、
たぶんシートの位置がほんの少し違うせい。


そのことに気づいていないふりをしている私と
気づいていないふりをしている私に気づいてないふりをするあなたと
どっちがうそつきなんだろう?


いつもの帰り道、でもあなたに送ってもらう最後の帰り道。
こんな時に限って道はすいていて、信号もことごとく青で。
あっという間に着いちゃったね。
もう私の家の前。


なかなか車を降りられずにぐずぐずしている私をせかさずに
でもエンジンは切らないまんまのあなたの様子から
私たち、もう終わりなんだなって分かる。


このCD、最後の曲がいちばん好きだから。
それを聞いてから車を降りるね。


そう言った私に、
じゃあ持って帰っていいよって


とんちんかんな返事をするあなたと
ほんとうは泣きたいくせに笑ってしまう私と
どっちがずるいんだろう?


明日から
ひとりでも大丈夫?って聞くあなたはずるいし
ひとりでも大丈夫、って答える私はうそつき。

テンプレ。
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by sivaxxxx | 2005-10-05 01:30 | かく | Trackback(1) | Comments(17)
癖になりそう?
朝も昼も夜もアレのことでもう最近頭がいっぱいです。
このままだと仕事に差支えがでてくること必至です。

というわけでアレな散文とやらを書いてみようと思ったのですが・・・・・・
なかなかアレって難しいものですね。


・・・・・・
・・・・・・

アレ?こんなのでいいの?
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by sivaxxxx | 2005-06-19 23:38 | かく | Trackback(2) | Comments(21)